青空の思い出
屋上で寝転んだ
小学校の時、面白い授業があった。
天気のよい日、先生が「今日は屋上に行ってみましょう」と言い、先生に率いられたクラスの皆とで校舎の屋上に行き、全員が屋上の床に寝転んだ。
床はざらざらした目の粗いコンクリートで、雨にさらされて色が抜けたくすんだ灰色。普段コンクリートに直接寝転ぶこともないし、屋上で完全に横になるのも初めての体験だった。
3階建ての校舎の屋上はそれでも十分に高く、住宅街だったため近隣では一番背の高い建物だった。周りには山もなかった。
仰向けに体を横たえると、青空だけが視界に入ってきた。屋上を囲む落下防止用のフェンスも見えなかったのでまさに青空と白い雲だけ。とたんに背中側がむずむずしてきた。高いところから下を見下ろすと足元がくすぐったく感じるが、あれと似ている。
そのうち雲が風に流されて動いているのか、自分が宙に浮いて流れていくのか、判断がつかなくなっていった。背中の下は硬い感触があるのに、目からの情報はとてつもなく不安定で、その違和感にくらくらした。
クラスの皆も同様なのか、いつも賑やかな小学生たちなのに自然とおしゃべりが止んでいった。
私の隣には女の先生が横になっていて、
「フシギな気持ち」と話しかけると「そうだね」と答えが返ってきた。
なぜあの先生は屋上に寝転ぶなんてことを思いついたのか、今考えると不思議だ。でも、あれをいつかまたもう一度やってみたくてたまらない。大人になった今でもあの浮遊感を味わえるだろうか。